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2026年 金沢市の地価動向まとめ — 北陸新幹線延伸・観光回復で中心部と郊外はどう変わった?

金沢駅東口の鼓門ともてなしドーム
金沢駅東口に立つ鼓門ともてなしドーム。北陸新幹線の玄関口として観光客を迎え、武蔵が辻・近江町市場へと続く商業軸の起点となっている。 出典: Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0, MaedaAkihiko)

はじめに — 北陸新幹線敦賀延伸と「観光金沢」の再起動

金沢市の公示地価平均は14万5,380円/㎡で、前年比+3.2%の上昇となりました。住宅地は9万305円/㎡、商業地は27万7,431円/㎡と、商業地が住宅地の3.1倍に達する典型的な地方中核都市の構造を持ちます。

背景には、2024年3月16日に開業した北陸新幹線敦賀延伸による観光客回復、能登半島地震からの復興需要、そして香林坊・片町・武蔵が辻といった中心商業地での大型再開発の動きがあります。本記事では、金沢市の地価動向を「中心部・郊外・駅前」の3軸から徹底分析し、なぜここまで伸びているのか、今後どこまで上昇するのかをデータに基づいて解説します。

金沢市の地価ランキング — 中心商業地が急伸

金沢市内のエリア別地価ランキング(公示・基準合算ベース)は以下の通りです。

順位エリア平均地価(円/㎡)変動率
1香林坊922,500+5.15%
2武蔵町805,000+7.30%
3本町721,250+5.60%
4南町570,000+7.50%
5片町554,333+10.40%

国土交通省「地価公示」「都道府県地価調査」より土地ペディア作成

最高値は金沢市本町2-16-16の118万円/㎡(基準地価、+8.3%)。金沢駅東口から徒歩圏のホテル用地で、北陸新幹線敦賀延伸後の宿泊需要急増を反映しています。注目すべきは片町(+10.4%)の伸びで、香林坊東急スクエアの閉館・リブランドや片町四番組海側地区の再開発計画が市場に織り込まれ始めた結果といえます。

用途別の地価構造 — 商業地が住宅地の3.1倍

金沢市の用途別地価は以下の通りです。

用途平均地価(円/㎡)構造的特徴
住宅地90,305兼六園周辺・小立野台地・寺町などに高価格帯
商業地277,431香林坊・武蔵が辻・片町の3核構造

国土交通省「地価公示」より土地ペディア作成

商業地が住宅地の約3.1倍という比率は、東京都心部(約4-5倍)や名古屋市(約3倍)と比べても標準的ですが、金沢の特徴は「観光と地元消費が同居する中心商業地」が強固に存在する点にあります。観光客は駅東口→武蔵が辻→兼六園・21世紀美術館→香林坊・片町と回遊し、地元客は香林坊大和・KOHRINBO 109・近江町市場で日常消費を行うため、商業地の収益力は二重に支えられています。

過去10年の地価推移 — 緩やかな上昇から本格的な回復へ

金沢市の過去5年間の地価推移は以下の通りです。

公示地価基準地価総平均
2020年130,102130,735130,411
2021年127,555130,264128,883
2022年127,318132,041129,634
2023年131,115135,737133,404
2024年134,525141,719138,052

国土交通省「地価公示」「都道府県地価調査」より土地ペディア作成

2021年に底打ちした後、2022年以降は5期連続で上昇しています。とくに2024→2025年は5.3%の伸びで、これは2024年3月の北陸新幹線敦賀延伸を境にした「観光金沢」の本格回復が地価データに表れた格好です。10年スパンで見ても、2015年の総平均10万3,841円/㎡から2025年14万5,380円/㎡まで、約40%の上昇となっています。

周辺市町との比較 — 金沢都市圏の3層構造

金沢市を中心とした金沢都市圏の地価は、明確な3層構造を持っています。

順位市町平均地価(円/㎡)変動率住宅地商業地
1金沢市144,464+3.20%90,305277,431
2野々市市89,120+3.51%90,68886,333
3白山市46,214+2.07%46,42252,462
4小松市37,926+2.23%30,80665,609

国土交通省「地価公示」「都道府県地価調査」より土地ペディア作成

注目すべきは、野々市市(+3.51%)が金沢市(+3.20%)を上回って県内変動率トップに立っている点です。野々市市は金沢市西部に隣接し、金沢工業大学・北陸大学など教育機関が集積する若年人口流入エリアとして、住宅地90,688円/㎡が商業地86,333円/㎡を上回る独特の構造を持ちます。

白山市小松市も新幹線小松駅・加賀温泉駅の開業効果で前年比+2%台を維持しており、金沢都市圏全体が「中心部の観光・商業需要 → 郊外の住宅・通勤需要」へと波及する好循環に入っています。

北陸新幹線敦賀延伸の地価インパクト

兼六園の雪吊り — 金沢を象徴する伝統的景観
兼六園の雪吊り。冬の風物詩として観光客を惹きつけるとともに、年間を通じた集客の核となっている。 出典: Wikimedia Commons.jpg)(CC BY 2.0, Winniepix)

観光客と宿泊需要の急増

2024年3月16日、北陸新幹線が金沢から敦賀まで延伸開業し、関西圏(米原・京都・大阪)からの直通が容易になりました。その結果、石川県の延べ宿泊者数は2024年に1,186万7,430人(前年比+36.0%)に到達し、伸び率は全国トップとなっています。外国人宿泊者は227万9,450人で、2023年比2.21倍、2019年比2.31倍と全国最高水準で、日本政策投資銀行は石川県内への経済波及効果を年間約279億円と試算しています。

兼六園の入園者数は2024年度に250万3,768人(前年度比+17.0%)と5年ぶりにコロナ前水準を回復、2025年(暦年)は257万7,177人で外国人60万2,209人と過去最多を更新しました。21世紀美術館も2024年度の交流ゾーン入場者が約49万6,000人に達し、観光ハブとしての存在感を強めています。

客室数の急拡大とホテル投資

宿泊需要の急増は、ホテル開業ラッシュに直結しました。金沢市の客室数は、2015年3月の8,196室から2024年3月の1万3,759室へと約168%(+5,563室)拡大し、簡易宿所も15施設から302施設(全国3位)へと急増しています。

ホテル名開業時期立地・特徴
ハイアット セントリック金沢2020年8月金沢駅西口、ハイアット系日本初
ハイアット ハウス金沢2020年8月金沢駅西口、長期滞在対応
THE HOTEL SANRAKU KANAZAWA2022年12月近江町市場2分、215室
フォーポイント・フレックス by シェラトン金沢2024年11月マリオット系日本初展開ブランド

主要ホテル開業情報より土地ペディア作成

特に2024年11月開業のフォーポイント・フレックス by シェラトン金沢は、マリオット・インターナショナルが日本で初めて展開する「フォーポイント・フレックス」ブランドで、KKRがユニゾインを買収しリブランドした案件です。外資系チェーンが金沢を「日本初」立地に選ぶこと自体が、観光地としての将来性への評価を示しています。

中心市街地の再開発プロジェクト

ひがし茶屋街 — 国の重要伝統的建造物群保存地区
ひがし茶屋街。重要伝統的建造物群保存地区として観光の中核を担う一方、近接する武蔵が辻商業地の地価を底上げする要因にもなっている。 出典: Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0, 663highland)

香林坊・片町エリアの再構築

商業地の核である香林坊では、2025年2月28日に「香林坊東急スクエア」が閉館し、「クラソ・プレイス香林坊」へとリブランドされました。隣接する香林坊大和・KOHRINBO 109・片町きらら(H&M、スギ薬局等)は継続営業し、テナント構成の見直しが進行中です。

さらに片町2丁目では、片町四番組海側地区第一種市街地再開発事業(約0.4ha、延床約1万8,000㎡)が進行しています。スケジュールは2024年7月1日の都市計画決定 → 2025年度組合認可 → 2026年度権利変換 → 2027年度解体・着工 → 2030年度完成を予定しており、事業協力者は野村不動産。完成後は片町交差点の景観を一変させ、観光客と地元客の双方を引き込む新たな核となる見通しです。

金沢駅西口の Zepp金沢

金沢駅西口の広岡3丁目では、日本海側初のZeppライブハウス「Zepp金沢」(約1,200人収容)の建設計画が進行中です。

  • 敷地面積:3,042.96㎡/延床面積:2,659.33㎡
  • 構造:鉄骨2階建
  • 着工:2026年5月/竣工:2027年10月
  • 事業:西松建設/設計:浦建築研究所

金沢駅西口側はハイアット セントリック・ハイアット ハウスの開業以降、東口(鼓門・もてなしドーム)に偏っていた人流をバランス化させてきました。Zepp金沢の開業はライブエンタメ需要を取り込み、西口側の地価をさらに押し上げる材料となります。

金沢港クルーズターミナルとインバウンド

2020年6月1日に開業した金沢港クルーズターミナル(鉄骨3階建、延床1万633㎡、総事業費約26.5億円)は、コロナ禍で停滞していたものの、2026年3月21日にAzamara Pursuitの寄港で受入を本格再開しました。武蔵が辻・近江町市場まで車で約10分の立地で、寄港時は中心商業地への観光消費を直接押し上げています。

金沢市の地価を押し上げる構造要因

1. 観光・宿泊需要の継続的拡大

北陸新幹線敦賀延伸による関西圏からの観光客流入は、一過性のブームではなく、外国人宿泊者の継続増加という構造変化として定着しつつあります。兼六園の外国人入園者60万人台到達、フォーポイント・フレックス by シェラトンのような外資系ブランドの「日本初」進出は、金沢が国内有数のインバウンド都市として認識され始めた証左です。

2. 中心商業地の希少性

香林坊・武蔵が辻・片町という3核を擁する金沢の中心商業地は、戦災を免れた狭小な区画割りに観光・商業需要が集中するため、相対的な「土地の希少性」が高い構造を持ちます。本町1丁目から香林坊2丁目にかけての商業地が、地方都市としては突出して高い1平米80万円〜120万円台で取引されているのは、この希少性のプレミアムが反映されたものです。

3. 金沢都市圏内の人口集約

金沢市の人口は2026年1月時点で44万1,947人と、2020年国勢調査の46万3,254人から-4.6%減少しています。一方で、2025年の県内転入超過は金沢市が+96人で県内1位を維持しており、能登・加賀方面からの「都市部への集約」が続いています。野々市市の住宅地+3.51%という伸びも、この金沢都市圏内の若年人口流動を反映したものです。

今後の見通し

上昇要因

  • 片町四番組海側地区再開発(2030年度完成)が片町商業地の地価をさらに押し上げる
  • Zepp金沢開業(2027年10月)で金沢駅西口の人流バランスが改善
  • インバウンド需要の継続拡大(外国人入園者の60万人台定着)
  • 金沢港クルーズ受入再開による武蔵が辻・近江町市場周辺の消費増加
  • 北陸新幹線の大阪延伸(時期未定)への期待先行

リスク要因

  • 金利上昇による商業用不動産の収益還元利回りの上昇
  • 能登半島地震からの復興需要の一段落と建築コスト高騰の継続
  • 人口減少に伴う郊外住宅地の二極化進行
  • ホテル供給過剰による稼働率低下リスク(客室数+168%の急拡大)
  • 中心商業地と郊外の格差拡大による地域経済の歪み

よくある質問

Q. 金沢市で最も地価が高い場所はどこですか? A. 公示・基準地価ベースで最も高いのは本町2-16-16(基準地価118万円/㎡、+8.3%)。金沢駅東口に近接するホテル用地で、北陸新幹線敦賀延伸後の宿泊需要急増を反映しています。商業エリア平均では香林坊(92万2,500円/㎡)が最も高く、変動率では片町(+10.4%)が最も伸びています。

Q. 金沢市と野々市市では、住宅購入はどちらが有利ですか? A. 住宅地の平均地価は金沢市9万305円/㎡に対し、野々市市は9万688円/㎡と若干高い水準。ただし、野々市市は金沢市西部に隣接し、教育機関の集積で若年人口流入が続いているため、長期的な値持ちは堅実です。一方、金沢市の小立野・寺町・兼六園周辺は希少性が高く、ブランド住宅地としての価値が安定しています。通勤・教育・将来の流動性の重視ポイントによって判断が分かれます。

Q. 北陸新幹線の大阪延伸はいつになりますか? A. 2026年5月時点で時期は確定していません。ルート選定(米原・小浜京都など)の議論が継続しており、当面は敦賀延伸(2024年3月開業)の効果が地価・観光に反映される段階です。大阪延伸が決定すれば、金沢の中心商業地・ホテル用地はさらなる上昇余地があると考えられます。

まとめ

金沢市の最新公示地価は平均14万5,380円/㎡(前年比+3.2%)で、住宅地+商業地ともに5期連続の上昇となりました。最高地価の本町は118万円/㎡(+8.3%)、商業エリアでは片町が+10.4%と二桁上昇を記録し、北陸新幹線敦賀延伸(2024年3月)後の観光・宿泊需要が地価データに明確に表れています。

中心商業地(香林坊・武蔵が辻・片町)では片町四番組海側地区再開発(2030年完成)と Zepp金沢(2027年10月開業)が次の上昇材料となり、郊外では野々市市(+3.51%)・白山市(+2.07%)・小松市(+2.23%)が金沢都市圏全体の底上げを担う構図です。「観光・商業の中心」と「住宅・通勤の郊外」が機能分担しながら共に上昇する金沢都市圏のモデルは、地方中核都市の理想形として注目に値します。

--- 出典・参考 - 国土交通省「令和7年地価公示」「令和7年都道府県地価調査」 - 石川県「住民基本台帳人口月報」 - 金沢市観光協会・金沢市観光調査報告書 - 北國新聞・日本経済新聞(兼六園入園者数、宿泊者数) - 日本政策投資銀行 北陸支店「北陸新幹線敦賀延伸経済効果レポート」

※本記事のデータは土地ペディアの市区町村ページに掲載されている令和7年(2025年)公示地価および基準地価に基づいています。最新の令和8年(2026年)データは順次更新予定です。

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