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川崎区日進町が3年連続15%超 — 全国2万4千地点でわずか56という上昇地点の正体

早朝のJR川崎駅東口駅前広場と周辺の商業ビル群
JR川崎駅東口。アトレ川崎や川崎ルフロンが並ぶこの一帯から南西へ歩いて10分ほどの場所に、いま首都圏で最も「長く」上がり続けている公示地点がある。 出典: Wikimedia Commons(CC BY 4.0, Nesnad)

はじめに — 「3年連続15%超」は全国で56地点しかない

令和8年地価公示で、川崎市川崎区日進町23番8(商業地)は69万4,000円/㎡、前年比+15.1%を記録しました。単年の上昇率だけを見れば、これを上回る地点は首都圏に何十とあります。この地点が特異なのは、令和6年+15.6%、令和7年+16.0%、令和8年+15.1%と、3年続けて15%を超えた点にあります。

国土交通省「地価公示」の全国の継続地点2万4,564地点(3年分の価格が連続して取れる地点)を土地ペディアで集計したところ、3年連続で15%以上上昇した地点は56地点、全体の0.23%しかありませんでした。そのうち神奈川県は3地点、川崎市はこの日進町23番8ただ1つです。

川崎市全体の動向は2026年 川崎市の地価動向で扱っています。本記事はあえて範囲を絞り、「日進町という一点がなぜ3年も止まらないのか」だけを、町丁目単位のデータで追いかけます。

日進町23番8 — 20年の停滞と、3年の急騰

2002年から2022年までは「ほぼ動かない土地」だった

日進町23番8の価格系列をさかのぼると、この地点が急騰地点になったのはごく最近だとわかります。

年(地価公示)価格(円/㎡)前年比
平成14年(2002)46万8,000
平成25年(2013)34万3,000±0.0%
令和3年(2021)40万3,000±0.0%
令和4年(2022)41万5,000+3.0%
令和5年(2023)45万0,000+8.4%
令和6年(2024)52万0,000+15.6%
令和7年(2025)60万3,000+16.0%
令和8年(2026)69万4,000+15.1%

国土交通省「地価公示」より土地ペディア作成

2002年の46万8,000円/㎡から下落を続け、2011年から2013年までは34万3,000円/㎡で3年間まったく動きませんでした。2021年も前年と同額の40万3,000円/㎡で据え置きです。2002年の水準を回復したのは2024年で、実に22年かかっています。

つまりこの地点は「ずっと強かった土地」ではありません。20年間ほぼ横ばいだった土地が、2023年を境に別の値動きに切り替わった、というのが正確な理解です。2023年の45万0,000円/㎡から2026年の69万4,000円/㎡まで、わずか3年で+54.2%(1.54倍)に達しました。坪単価では229万4,214円になります。

隣接する日進町13番14外も同じ形をしている

日進町にはもう1地点、13番14外(商業地)があります。こちらも同じタイミングで折れ曲がっています。

地点令和6年(2024)令和7年(2025)令和8年(2026)令和5年比
日進町23番852万0,000円/㎡(+15.6%)60万3,000円/㎡(+16.0%)69万4,000円/㎡(+15.1%)+54.2%
日進町13番14外44万3,000円/㎡(+9.1%)50万0,000円/㎡(+12.9%)56万2,000円/㎡(+12.4%)+38.4%

国土交通省「地価公示」より土地ペディア作成

13番14外の系列は1999年の52万円/㎡から始まり、2005年から2006年には32万7,000円/㎡まで下げていました。1999年の水準を上回ったのは2026年の56万2,000円/㎡が初めてです。27年かけてようやく元に戻った土地が、いま年12%台で上がっている——これが日進町の実像です。

町として見ると+13.8%

日進町の公示地価は2地点平均で62万8,000円/㎡、前年比+13.8%(坪単価207万6,033円)。区内平均の70万5,984円/㎡と比べればまだ下ですが、変動率では区内でも最上位グループに入ります。

「3年連続15%超」を全国で数える

京急川崎駅の出入口。日進町はこの駅の南西側に広がる
京急川崎駅の出入口。日進町は京急線の高架に沿って南西へ広がる市街地で、JR川崎駅・京急川崎駅の双方から徒歩圏にある。 出典: Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0, DAJF)

都道府県別に見ると56地点の偏りがはっきりする

3年連続15%超の56地点を都道府県別に分けると、上昇の「震源」がどこにあるかが見えてきます。

都道府県地点数主な所在地
大阪府18大阪市西区、中央区(道頓堀・難波)、福島区、北堀江・南堀江
北海道10千歳市5、札幌市中央区2、札幌市東区1、富良野市1ほか
宮城県5仙台市宮城野区2、泉区1、若林区1、多賀城市1(工業地中心)
東京都4台東区(浅草・西浅草)のみ
千葉県4流山市3(住宅地)、船橋市1(工業地)
神奈川県3横浜市中区2、川崎市川崎区1
福岡県3福岡市東区2、志免町1
長野県3白馬村2、野沢温泉村1
その他6京都府2、兵庫県2、岐阜県1、沖縄県1

国土交通省「地価公示」より土地ペディア作成(継続2万4,564地点を集計)

56地点の内訳を見ると、大阪の都心商業地、千歳や白馬・野沢温泉といった半導体・インバウンド需要の地、仙台の物流適地、浅草の観光地——と、いずれも「特定の外部要因が一気に流れ込んだ場所」に集中しています。首都圏では東京都4・千葉県4・神奈川県3の計11地点しかありません。

東京23区に頼らずに首都圏を語れる地点

首都圏の11地点をさらに細かく見ると、東京都の4地点はすべて台東区の浅草・西浅草で、訪日観光需要というひとつの説明で片づきます。千葉県は流山おおたかの森周辺の住宅地3地点と船橋の工業地1地点、神奈川県は横浜市中区の関内・野毛の2地点と、川崎区日進町の1地点です。

つまり「東京23区を除いた首都圏で、3年間15%超を続けた商業地」は、横浜市中区の2地点と川崎区日進町の1地点、合わせて3つしかありません。日進町はその一角を占めています。

神奈川県全体のなかでの位置づけ

神奈川県の令和8年地価公示を土地ペディアで集計すると、継続地点は住宅地1,275地点・商業地359地点・工業地72地点。住宅地は1,206地点(94.6%)が上昇し、下落は5地点のみ。商業地は359地点中352地点が上昇し、下落地点はゼロでした。平均変動率は住宅地+3.43%、商業地+7.35%、工業地+5.95%です。

前年の令和7年も同じ傾向で、住宅地は継続1,303地点のうち1,219地点が上昇(平均+3.36%)、商業地+6.61%、工業地+6.23%でした。県全体が2年続けてほぼ全面高という環境のなかで、日進町の+15%台は商業地平均のおよそ2倍のペースということになります。

なぜ日進町なのか — 川崎区の町丁目別データで見る

変動率上位は「駅前本町」ではなく、その周辺の町

川崎区内の町丁目別に公示地価の変動率を並べると、上昇の中心が最高地価地点からずれていることがわかります。

町名公示地価(円/㎡)前年比地点数
榎町78万0,000+16.4%1
新川通89万5,000+15.8%1
宮本町84万4,000+14.1%1
日進町62万8,000+13.8%2
砂子196万5,000+13.4%2
小川町97万0,000+11.4%2
駅前本町529万5,000+10.8%2

国土交通省「令和8年地価公示」より土地ペディア作成

川崎市の最高地価地点である駅前本町11番1外は700万円/㎡(+11.1%、坪単価2,314万495円)ですが、変動率では区内7位です。上位を占めるのは、最高地価地点の周囲を取り巻く50万〜90万円台の町——榎町、新川通、宮本町、日進町でした。

伸びているのは「中位価格帯」である

この構図は、日進町の上昇が単なる駅前バブルの波及ではないことを示しています。駅前本町の700万円/㎡はすでに大型商業・業務ビルの敷地として値付けされており、上値の伸びしろが限られます。一方、日進町・榎町・新川通は、駅から徒歩圏にありながら中低層の店舗・事務所・共同住宅が混在する土地で、容積を使い切っていない敷地が多く残っていました。

  • 立地条件:JR川崎駅・京急川崎駅の双方から徒歩圏で、JR東海道線・京浜東北線・南武線と京急本線のすべてを使い分けられる
  • 用途の柔軟性:商業地でありながらホテル・分譲マンション・オフィスのいずれにも転用余地がある
  • 価格の絶対水準:50万〜90万円台は、都心3区の商業地に比べて事業者の取得ハードルが低い
  • 供給の希少性:まとまった敷地が出れば即座に開発需要が集まる規模感

「駅前が上がる→周辺の低未利用地が開発適地として再評価される→周辺の変動率が駅前を上回る」という順序で価格が動いており、日進町はいまその第2段階の中心にいます。

実際に大規模開発が動き出した

その仮説を裏づける動きが2026年に表面化しました。住友不動産による「(仮称)川崎日進町計画」が、川崎市の条例に基づく環境影響評価手続に入っています。川崎市環境局の公告によれば、指定開発行為実施届の受理が令和8年7月1日、条例環境影響評価準備書の公告が令和8年7月8日、縦覧および意見書の受付は同年8月21日まで。説明会は7月24日・25日に東海道かわさき宿交流館で開催されました。種別は第2種です。

なお、建物の階数・戸数・高さについては川崎市の公表資料に記載がないため、本記事では触れません(報道ベースの数値は流通していますが、一次資料で確認できないためです)。重要なのは、条例上の環境影響評価が必要な規模の開発が日進町で実際に動き始めたという事実そのもので、これは3年連続の地価上昇が期待だけでなく実需に裏づけられていることを意味します。

武蔵小杉との比較 — 同じ市内でも上がり方が違う

川崎駅西口のミューザ川崎とホテルメトロポリタン川崎
JR川崎駅西口。ミューザ川崎シンフォニーホールとホテルメトロポリタン川崎。駅を挟んだ東西で商業集積が完成した結果、次の開発余地は駅の南西側へ移りつつある。 出典: Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0, MaedaAkihiko)

中原区の最高変動率は+11.9%

川崎市でタワーマンション開発が最も活発なのは中原区の武蔵小杉です。しかし変動率で見ると、日進町とは性格が違います。

地点公示地価(円/㎡)令和6年令和7年令和8年
中原区木月4丁目1276番166万0,000+10.4%+11.3%+11.9%
中原区小杉町1丁目513番1外114万0,000+10.0%+10.3%+11.8%
中原区小杉町3丁目441番29261万0,000+8.1%+10.3%+11.1%
中原区新丸子町922番1外333万0,000+10.0%+9.8%+9.9%
川崎区日進町23番869万4,000+15.6%+16.0%+15.1%

国土交通省「地価公示」より土地ペディア作成

武蔵小杉の中心地点は、3年とも10%前後で安定的に伸びています。地上43階・高さ約155m(最高約165m)・約500戸の「(仮称)小杉町一丁目計画」(三井不動産レジデンシャル、設計・施工は竹中工務店、2025年6月着工・2029年10月31日竣工予定)や、総戸数1,438戸の「ザ・パークハウス 武蔵小杉タワーズ」といった大型供給が続いていますが、地価はすでに㎡あたり100万〜330万円という高い水準に乗っており、そこからの伸び率は自然と抑えられます。

対して日進町は69万4,000円/㎡という低い出発点から15%台で走っています。武蔵小杉が「高い水準を維持しながら着実に上がる街」だとすれば、日進町は「低い水準から一気に格差を詰めている場所」です。同じ市内でも、地価の上がり方はまったく別物だと理解しておくべきです。

交通整備の完了が市全体を底上げしている

綱島街道の整備完了を伝える川崎市の報道発表資料。1990年頃と2026年の上丸子跨線橋を比較したビフォー・アフター写真と整備効果の数値が示されている
川崎市が2026年4月22日に公表した報道発表資料。綱島街道(主要地方道 東京丸子横浜)の川崎市内本路線全区間3,250mの整備が、2026年3月31日に完了したことを伝えている。上段の写真は1990年頃と2026年の上丸子跨線橋部の比較。 出典: 川崎市(建設緑政局)報道発表資料「主要地方道 東京丸子横浜(綱島街道)の整備が完了しました!」(令和8年4月22日)

地価だけを見ていると見落としがちですが、川崎市の交通基盤にはこの数年で大きな節目がありました。武蔵小杉を通る綱島街道(主要地方道 東京丸子横浜)は、歩道・側道・階段等の周辺工事が2026年3月31日に完成し、多摩川(丸子橋)から中原区木月までの市内本路線全区間3,250mの整備がすべて完了しました。神奈川県が県道に指定した1955年から数えて、約70年越しの完成です。

川崎市の資料によれば、上丸子跨線橋部の交通量は整備前(1991年)の24時間約2万5,000台から4車線化後(2022年)に約3万7,000台へ約1万2,000台増加し、最大渋滞長は約1,000mから約110mへと約890m短縮されました。市はこの整備効果として「武蔵小杉駅周辺の再開発区域へのアクセス性向上による、周辺地域の利便性増大」を挙げています。

道路整備が直接に日進町の地価を押し上げるわけではありません。ただし、川崎市内の南北軸が完成し、幸区から中原区にかけての回遊性が高まったことは、川崎駅を中心とする商圏そのものの評価を底上げします。日進町の急騰は、この市全体の底上げのうえに、駅南西側という個別要因が乗った結果と見るのが妥当です。

今後の見通し

上昇要因

  • 住友不動産「(仮称)川崎日進町計画」が環境影響評価手続に入っており、着工が近づけば周辺の取引価格に反映される可能性が高い
  • 京急川崎駅隣接地では「川崎新!アリーナシティ・プロジェクト」(建設予定地は川崎区駅前本町25-4・25-1、敷地約1万3,640㎡、メインアリーナ最大1万5,000人規模)が進行中で、日進町は徒歩圏に位置する
  • 川崎区の商業地は令和8年公示で下落地点ゼロ。神奈川県全体でも商業地359地点中352地点が上昇と、地合いが極めて強い
  • 榎町+16.4%、新川通+15.8%、宮本町+14.1%と、日進町の周囲でも同水準の上昇が同時進行しており、単独地点の異常値ではない

リスク要因

  • 3年で+54.2%という上昇はストック(既存建物の賃料)ではなく開発期待に支えられている面が大きく、開発計画の遅延・縮小があれば調整が入りやすい
  • 金利上昇は、取得後に建てて売る事業モデルの採算を直撃する。日進町のような開発適地は金利感応度が高い
  • アリーナシティの開業時期は事業者の発表段階で変遷しており、期待の先食いが起きている可能性がある
  • 日進町の公示地点は2地点のみ。地点数が少ないエリアの平均変動率は、個別地点の事情に振られやすい

よくある質問

Q. 日進町23番8はどこにありますか? A. 川崎市川崎区日進町23番8で、JR川崎駅・京急川崎駅の南西側に位置する商業地の公示地点です。令和8年地価公示の価格は69万4,000円/㎡(坪単価229万4,214円)、標準地の面積は551㎡です。詳しい町別データは日進町のページで確認できます。

Q. 3年連続15%超はどのくらい珍しいのですか? A. 国土交通省「地価公示」の全国継続地点2万4,564地点のうち、令和6年・令和7年・令和8年の3年すべてで15%以上上昇したのは56地点(0.23%)です。神奈川県では横浜市中区の2地点と川崎区日進町23番8の3地点のみで、川崎市では日進町が唯一です。

Q. 武蔵小杉と日進町、資産価値が高いのはどちらですか? A. 絶対水準では武蔵小杉が上です。中原区新丸子町922番1外は333万円/㎡、小杉町3丁目441番29は261万円/㎡で、日進町23番8の69万4,000円/㎡の4〜5倍にあたります。一方で直近3年の伸び率は日進町が+54.2%、武蔵小杉の中心地点が+30%台と、日進町のほうが速いペースです。安定性を取るか変化率を取るかで評価は変わります。

まとめ

川崎区日進町23番8は、令和6年+15.6%、令和7年+16.0%、令和8年+15.1%と3年続けて15%を超えました。全国の継続公示地点2万4,564のうち、同じ条件を満たすのは56地点だけです。

この地点は20年以上ほぼ横ばいだった土地であり、2023年を境に値動きが切り替わりました。同じ川崎区でも、上昇率の上位は最高地価の駅前本町(+10.8%)ではなく、その周囲の榎町(+16.4%)・新川通(+15.8%)・宮本町(+14.1%)・日進町(+13.8%)です。駅前の値付けが飽和し、周辺の低未利用地が開発適地として再評価される——その第2段階が、いま川崎駅の南西で起きています。

住友不動産の開発計画が環境影響評価手続に入り、綱島街道の70年越しの整備が完了し、川崎区の商業地は下落地点ゼロ。東京23区の一等地の話をまったくせずに、首都圏で最も長く続く上昇を説明できる場所が、川崎駅から徒歩10分ほどのところにあります。

--- 出典・参考 - 国土交通省「令和8年地価公示」「令和7年地価公示」(全国継続地点の集計は土地ペディアによる) - 川崎市(建設緑政局)報道発表資料「主要地方道 東京丸子横浜(綱島街道)の整備が完了しました!」(令和8年4月22日) - 川崎市環境局環境対策部環境評価課「(仮称)川崎日進町計画に係る環境影響評価手続」 - 株式会社ディー・エヌ・エー/京浜急行電鉄株式会社 共同ニュースリリース(2023年11月21日)

※本記事の地価データは令和8年(2026年)1月1日時点の地価公示に基づき、土地ペディアの掲載データから作成しています。変動率は各年の公示価格から算出した単純比較値です。

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