「地価が上がっている」は住宅地の6割の話 — 全国平均+2.09%が隠す価格帯の断層

はじめに — 「+2.09%」は5つの別々の話の平均
令和8年(2026年)地価公示の住宅地は、全国平均で+2.09%でした。全用途(林地を除く)の下落地点比率も2022年の34.8%から19.1%まで下がり、見出しだけを追えば「地価は回復した」で終わる年です。
ただしこの平均は、まったく違う動きをしている5つの集団を1本にまとめた数字です。全国の住宅地公示地点1万7,890を当年の㎡単価で分けると、50万円/㎡以上の帯は+9.38%、5万円/㎡未満の帯は-0.12%。同じ調査のなかで9.50ポイントの差がついています。
そして5万円未満の帯は、2022年から2026年まで5年間、一度もプラスに転じていません。「地価が上がっている」という文は、住宅地公示地点の37.8%(6,759地点)については当てはまらない、というのが本記事の主題です。
本記事の集計はすべて、国土交通省の国土数値情報「地価公示」(L01)の全地点データを土地ペディアが独自に再集計したものです。図表の生成スクリプトも公開しています。
住宅地は価格帯で5本に割れている
5万円未満だけが5年間ずっとマイナス圏
まず、住宅地の平均変動率を価格帯×年で並べます。価格帯はその年の公示価格で分類しています。
| 価格帯(円/㎡) | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 | 2026の地点数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 5万円未満 | -0.44% | -0.10% | -0.05% | -0.12% | -0.12% | 6,759 |
| 5〜10万円 | +0.80% | +1.72% | +1.95% | +1.76% | +1.60% | 3,904 |
| 10〜20万円 | +1.14% | +2.42% | +3.22% | +3.29% | +3.08% | 3,646 |
| 20〜50万円 | +1.54% | +3.14% | +4.44% | +4.91% | +4.81% | 2,804 |
| 50万円以上 | +2.07% | +3.99% | +6.10% | +8.63% | +9.38% | 777 |
| 上下差 | 2.51pt | 4.08pt | 6.16pt | 8.74pt | 9.50pt | — |
国土交通省「地価公示」(国土数値情報 L01)より土地ペディア作成
順序が一度も入れ替わっていません。5年間、どの年をとっても、価格が高い帯ほど変動率が高い。偶然でこうはなりません。
上下差は2022年の2.51ポイントから2026年の9.50ポイントへ、3.8倍に開きました。全国平均が+0.52%から+2.09%へ4倍になったのと同じ期間に、内側の分散はそれ以上の速さで広がっています。
なお、2025年から2026年にかけては5〜10万円・10〜20万円・20〜50万円の3帯が同時に頭打ちになっています。50万円以上だけが+8.63%から+9.38%へ伸び続けており、上昇の担い手が上位帯だけに絞られつつある、というのが2026年の姿です。
下落地点は10万円/㎡を境に消える
平均値だけでなく、地点の内訳を見るとさらに極端です。

- 5万円未満: 住宅地49.0% / 商業地59.6% が下落
- 5〜10万円: 住宅地9.3% / 商業地18.5%
- 10〜20万円: 住宅地0.4% / 商業地1.6%
- 20〜50万円: 住宅地0.0%(2,804地点中0地点) / 商業地0.1%
- 50万円以上: 住宅地0.0%(777地点中0地点) / 商業地0.0%
住宅地では、20万円/㎡以上の帯3,581地点のうち、下落した地点は1つもありません。一方で5万円未満の帯では3,309地点が下がっています。同じ国の同じ年の話です。
5万円未満の帯も「全部が下がっている」わけではない
ここは誤読されやすいので先に潰しておきます。5万円未満の帯6,759地点の内訳は、上昇1,803(26.7%)・横ばい1,647(24.4%)・下落3,309(49.0%)です。過半の51.1%は下がっていません。
さらに、この帯の下落地点比率自体は改善し続けています。2022年64.9% → 2023年59.4% → 2024年53.6% → 2025年51.3% → 2026年49.0%。5年で15.9ポイント下がり、2026年についに5割を割りました。
つまり安い土地の状況は「悪化している」のではなく、「改善しているのに、上の帯の改善速度に追いつけないので相対的な差だけが開き続けている」というのが正確な表現です。
「価格帯の組成が変わっているだけ」ではないか
ここまでの集計には明確な限界があります。価格帯を各年の当年価格で再分類しているため、値上がりした地点は翌年に上の帯へ移動します。上の帯には「上がった実績のある地点」が流れ込み、下の帯には「上がらなかった地点」が残る。これだけで勾配が出てしまう可能性があります。組成効果と呼ばれる問題です。
そこで、帯を2022年の価格で固定し、同じ地点を4年間追いかけました。L01の各地点は過去の価格系列を保持しているため、地点を同定しなおさずに2022年価格と2026年価格を直接比較できます。

| 2022年時点の価格帯 | 住宅地 4年累積 | うち下落 | 商業地 4年累積 | うち下落 |
|---|---|---|---|---|
| 5万円未満 | +0.50% | 58.7% | -1.92% | 70.5% |
| 5〜10万円 | +8.10% | 16.5% | +5.26% | 31.8% |
| 10〜20万円 | +13.12% | 1.4% | +12.07% | 4.7% |
| 20〜50万円 | +19.23% | 0.1% | +22.19% | 0.7% |
| 50万円以上 | +33.45% | 0.0% | +39.26% | 0.1% |
国土交通省「地価公示」(国土数値情報 L01-26 の価格系列)より土地ペディア作成。2022年と2026年の双方に価格がある地点のみを対象とし、住宅地464地点・商業地333地点を欠測として除外
勾配は消えませんでした。2022年に5万円未満だった住宅地6,812地点は、4年かけて平均+0.50%しか動いておらず、58.7%は2022年より安くなっています。同じ4年間で、2022年に50万円以上だった502地点は+33.45%、下落したのは0地点です。
商業地はさらに露骨で、2022年に5万円未満だった1,382地点は4年で-1.92%。7割が2022年の水準を割り込んでいます。
組成効果は確かに存在しますが、それを取り除いても断層は残る、というのがこの表の結論です。
「都市と地方の差」ではないことの検証
次に潰すべき反論は「それは東京が強いだけ」「地方が弱いだけ」です。3つの角度から確認します。
東京都内の安い土地も、上がっていない

| 都府県 | 住宅地 県全体 | 5万円未満帯のみ | 5万円未満の地点数 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | +6.34% | -0.13% | 20 / 1,663 |
| 神奈川県 | +3.34% | +0.30% | 38 / 1,309 |
| 埼玉県 | +1.93% | -0.28% | 196 / 1,010 |
| 千葉県 | +4.41% | +1.21% | 241 / 954 |
| 愛知県 | +1.75% | -0.75% | 132 / 1,279 |
| 大阪府 | +2.74% | -1.03% | 98 / 1,213 |
| 兵庫県 | +2.10% | -0.26% | 198 / 883 |
| 京都府 | +2.27% | -0.48% | 91 / 442 |
| 福岡県 | +3.64% | +0.87% | 227 / 627 |
| 沖縄県 | +6.27% | +8.55% | 10 / 122 |
国土交通省「地価公示」(国土数値情報 L01)より土地ペディア作成
東京都の住宅地は全体で+6.34%。しかし都内にある5万円/㎡未満の20地点だけを平均すると-0.13%です。全国の5万円未満帯(-0.12%)とほぼ同じ値になります。東京にあることは、この帯の地点を救っていません。
同じことが大阪府(府全体+2.74%に対し5万円未満帯-1.03%)、愛知県(+1.75%に対し-0.75%)、兵庫県(+2.10%に対し-0.26%)でも起きています。県内の平均を押し上げているのは上の帯であり、下の帯は県境と無関係にほぼ同じ挙動をしています。
三大都市圏を除いても、勾配はむしろ急になる
逆方向も確認します。埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・京都・大阪・兵庫の8都府県を除いた地方圏だけで、同じ集計をしました。
| 価格帯 | 全国 | 三大都市圏8都府県 | 地方圏(8都府県を除く) |
|---|---|---|---|
| 5万円未満 | -0.12% | -0.05% | -0.13% |
| 5〜10万円 | +1.60% | +1.44% | +1.73% |
| 10〜20万円 | +3.08% | +2.87% | +3.73% |
| 20〜50万円 | +4.81% | +4.74% | +5.56% |
| 50万円以上 | +9.38% | +9.44% | +7.73% |
国土交通省「地価公示」(国土数値情報 L01)より土地ペディア作成。2026年住宅地。地方圏の50万円以上は26地点と少数
地方圏だけで見ても勾配は同じどころか、10〜20万円帯(+3.73% > 全国+3.08%)と20〜50万円帯(+5.56% > 全国+4.81%)ではむしろ急です。地方の高い土地は、全国平均より速く上がっています。
つまりこれは「都市 vs 地方」の話ではありません。地方圏の内部でも、価格水準による断層はそのまま再現されます。
都道府県の平均は「安い地点の比率」でほぼ説明できる
47都道府県について、住宅地地点のうち5万円/㎡未満が占める比率と、その県の住宅地平均変動率の相関を取ると、r = -0.726でした(n=47)。安い地点の比率が高い県ほど、県平均が低くなります。
| 5万円未満の比率が高い県 | 比率 | 県平均 | 5万円未満の比率が低い県 | 比率 | 県平均 |
|---|---|---|---|---|---|
| 青森県 | 92% | +0.20% | 東京都 | 1% | +6.34% |
| 秋田県 | 91% | +0.67% | 神奈川県 | 3% | +3.34% |
| 山形県 | 88% | +0.15% | 大阪府 | 8% | +2.74% |
| 山梨県 | 87% | -0.26% | 沖縄県 | 8% | +6.27% |
| 茨城県 | 87% | +0.98% | 愛知県 | 10% | +1.75% |
国土交通省「地価公示」(国土数値情報 L01)より土地ペディア作成。2026年住宅地
都道府県ランキングは、実質的に「その県にどれだけ安い土地があるか」のランキングとほぼ同義になっています。地価が下落しているエリアの分析や人口減少と地価の関係で見えていた地域差は、価格水準という別の軸で読み直せる可能性があります。
例外は沖縄県
ただし例外があります。沖縄県は5万円未満の比率が8%と低いうえに、その5万円未満帯そのものが+8.55%と大きくプラスです。他県では見られないパターンで、那覇市を中心とした県全体の上昇圧力が、安い帯にまで届いていることを示しています。
5万円未満の帯だけを県ごとに比べると、上位は佐賀県+1.89%、大分県+1.53%、熊本県+1.23%、千葉県+1.21%。下位は奈良県-1.59%、鹿児島県-1.09%、大阪府-1.03%、新潟県-0.87%です。安い土地のなかにも県差はあり、「安ければ必ず下がる」という決定論ではありません。
商業地はもっと極端、そして工業地だけが例外
商業地の5万円未満は5年間一度もプラスにならなかった
| 価格帯 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 |
|---|---|---|---|---|---|
| 5万円未満 | -1.17% | -0.93% | -0.81% | -0.77% | -0.66% |
| 5〜10万円 | +0.09% | +0.73% | +1.14% | +1.11% | +1.11% |
| 10〜20万円 | +0.74% | +1.98% | +2.89% | +3.19% | +3.06% |
| 20〜50万円 | +1.41% | +3.16% | +4.77% | +5.39% | +5.38% |
| 50万円以上 | +1.38% | +4.31% | +7.63% | +10.30% | +11.13% |
| 上下差 | 2.56pt | 5.24pt | 8.44pt | 11.07pt | 11.79pt |
国土交通省「地価公示」(国土数値情報 L01)より土地ペディア作成
商業地の上下差は5年で4.6倍。住宅地の3.8倍を上回ります。5万円未満の帯は2022年から2026年まで一度もプラスに転じておらず、商業地全体が+0.41%から+4.18%へ10倍になった同じ5年間に、この帯だけが取り残されました。商業地と住宅地の値動きの違いは用途の差として語られがちですが、実際には用途の内側で価格帯の差のほうが大きく出ています。
工業地は、安い帯でもプラスを保っている

工業地1,050地点は、全価格帯でプラスです。5万円未満の帯(514地点)でも+2.71%、5〜10万円+5.33%、10〜20万円+7.35%、20〜50万円+8.53%。2026年の上昇地点比率は90.7%(952地点)で、下落はわずか23地点(2.2%)しかありません。
そしてこの下落した23地点は、すべて5万円/㎡未満の帯に属していました。最も高いもので松山市北吉田町の4万5,300円/㎡です。内訳は南三陸町志津川(-2.0%)、石巻市須江(-1.1%)、塩竈市新浜町(-0.8%)、釧路市仲浜町(-0.7%)、室蘭市港北町(-0.6%)、長崎市香焼町(-0.6%)、三原市糸崎(-0.5%)、高松市瀬戸内町(-0.3%)など、臨海部の港湾関連用地に集中しています。
なぜ「価格水準そのもの」が効くのか
ここからは筆者の解釈です。データが直接語っているのは相関までであり、因果はここに書いた仮説の域を出ません。
工業地の例外が、いちばん多くを語っている
住宅地・商業地と工業地の違いは、「安いことが選ばれる理由になるかどうか」だと考えられます。
工場・物流施設は広い敷地を必要とし、安い土地であること自体が積極的な立地理由になります。データセンター需要の広がりについてはデータセンターと半導体工場が動かした地価でも触れましたが、こうした用途では「安い」は弱さではなく強みです。だから5万円未満の帯でもプラスを保てる。
一方、住宅地や商業地では「安い」は選好理由になりません。住宅地の価格は通勤利便性・生活利便性・学区といった要素の写像であり、安いことはそれらが乏しいことの結果です。安さは需要を呼ばず、むしろ需要がないことの証拠になってしまう。
そして工業地のなかでも唯一下がった23地点が、いずれも臨海部の港湾関連用地だったことは示唆的です。港湾に接していることが必須の用途は代替が効かないため、その地域の産業が縮めば土地の価格もそのまま縮む。「代替可能性があるから安さが武器になる」という構図の裏返しと読めます。
上の帯が速すぎる
もう一つは、格差が開いた原因の大半が「下が落ちた」ではなく「上が加速した」ことにある点です。5万円未満の帯は2022年-0.44%から2026年-0.12%へむしろ改善しています。同じ期間に50万円以上の帯は+2.07%から+9.38%へ、7.31ポイント上がりました。上下差はこの5年で2.51ptから9.50ptへ6.99ポイント広がりましたが、その内訳は上位帯が+7.31ポイント、下位帯が+0.32ポイント(改善方向)です。差の拡大はすべて上の加速で説明できます。
上位帯には投資マネーが入りますが、5万円未満の土地は1件あたりの金額が小さすぎて投資商品として成立しません。金利のある世界に入ってからも上位帯が伸び続けているのは、金利より資金の集中先が効いていることを示しています。住宅ローン金利1%時代の住宅地で見たように、実需の買い手は金利に素直に反応しますが、上位帯の値動きはそれとは別の論理で動いています。
「価格帯」は「立地の質」の代理変数でもある
なお、価格水準そのものが原因なのか、価格水準が立地の質を要約しているだけなのかは、この集計では区別できません。5万円/㎡未満という値そのものが値動きを決めているのではなく、その値になる立地条件が値動きを決めていると考えるほうが自然です。本記事の主張は「価格帯という単純な軸で切るだけで、都道府県で切るより鮮明に分かれる」という点にとどめます。
この集計の限界と、読み取ってはいけないこと
読者が誤読しないように、限界を明示しておきます。
- 価格帯は各年の当年価格で再分類しているため組成効果がある。上がった地点は翌年に上の帯へ移る。これを排した集計が本記事の「帯を2022年で固定」の節であり、そちらでも勾配は残ったが、追跡できるのは2022年から2026年の4年間だけである
- L01-20(2020年)とL01-21(2021年)には変動率フィールドが存在しない。同じ位置に選定状況コードが入っているため、本記事の時系列は2022年から2026年の5年分に限られる
- 「安い土地が下がっている」はあくまで平均の話である。5万円未満の帯でも51.1%は上昇か横ばいであり、この帯に属する個別の土地が必ず下がるという意味ではない
- 全体としては減速でも下落でもなく、上昇の鈍化と格差の拡大である。全用途の下落地点比率は2022年34.8%から2026年19.1%まで減り続けている
- 用途区分020(林地)は都道府県単位・円/10a の別集計のため全ての集計から除外している
- 集計はすべて地点別の単純平均であり、市区町村平均や国土交通省の公表値(面積等による加重を含む)とは一致しない
今後の見通し
差がさらに開く方向に働く要因
- 2026年時点で20万円/㎡以上の帯には下落地点がゼロ。ここからさらに下がる余地が構造的に小さく、上の帯の上昇はしばらく続きやすい
- 上下差の拡大ペースは2025年の8.74ptから2026年の9.50ptへ鈍化しているが、方向は変わっていない
- 5万円未満の帯が多い県ほど県平均が低い(r = -0.726)構造は、人口動態が反転しない限り維持される
差が縮む方向に働く要因
- 5万円未満帯の下落地点比率は5年連続で改善しており、2026年に初めて5割を割った
- 5〜10万円・10〜20万円・20〜50万円の3帯が2026年に同時に頭打ちになった。上の帯の加速が止まれば上下差の拡大も止まる
- 工業地では安い土地でもプラスを維持できている。産業用途の需要が住宅地・商業地の下位帯に波及する余地はある
- 沖縄県のように、県全体の上昇圧力が安い帯まで届いている例外が実在する
よくある質問
Q. 全国平均+2.09%という数字は間違っているのですか? A. 間違いではありません。1万7,890地点の単純平均として正しい値です。ただしその内側には-0.12%から+9.38%まで9.50ポイント開いた5つの集団があり、平均値だけを見ると全体像を取り違えます。自分の土地がどの帯に属するかを確認したうえで平均と比べるのが実務的です。
Q. 自分の土地が5万円/㎡未満だと、価値は下がり続けるのですか? A. そうとは限りません。2026年の5万円未満帯6,759地点のうち、上昇1,803・横ばい1,647で、51.1%は下がっていません。また同じ帯でも佐賀県は+1.89%、大分県は+1.53%とプラスです。帯全体の平均が-0.12%であることと、個別の土地がどうなるかは別の話です。
Q. 東京の土地なら安くても上がりますか? A. データ上はそうなっていません。東京都の住宅地は全体で+6.34%ですが、都内にある5万円/㎡未満の20地点の平均は-0.13%で、全国の同じ帯(-0.12%)とほぼ同じです。都道府県よりも価格水準のほうが強く効いています。
Q. なぜ工業地だけ例外なのですか? A. 工業地では「土地が安い」ことが積極的な立地理由になるためだと考えられます。工業地1,050地点は全価格帯でプラスで、5万円未満の帯でも+2.71%です。下落した23地点はすべて5万円未満かつ臨海部の港湾関連用地で、港湾に接していることが必須という代替不可能性が裏目に出た形です。ただしこれは筆者の解釈であり、公示地価のデータ自体が理由を語っているわけではありません。
まとめ
令和8年地価公示の住宅地は全国平均+2.09%。しかしその内側では、50万円/㎡以上の777地点が+9.38%で下落ゼロ、5万円/㎡未満の6,759地点が-0.12%で49.0%が下落という、まったく別の2つの市場が動いていました。上下差は5年で2.51ptから9.50ptへ3.8倍に開いています。
この断層は「都市 vs 地方」では説明できません。東京都内の5万円未満20地点は-0.13%で全国の同帯とほぼ同じ、三大都市圏8都府県を除いた地方圏でも勾配は同じかむしろ急でした。帯を2022年で固定して同じ地点を4年追いかけても、5万円未満は+0.50%、50万円以上は+33.45%と勾配は残りました。
例外は工業地だけです。全価格帯でプラスを保ち、下落した23地点はすべて5万円未満の臨海部でした。「安いことが選ばれる理由になる用途」だけが、この断層の外側にいます。
減速でも全国的な下落でもありません。上がっているのは事実です。ただし、上がっている土地とそうでない土地を分けているのは県境ではなく、㎡単価という一本の線でした。
--- 出典・参考 - 国土交通省「令和8年地価公示」「令和7年地価公示」「令和6年地価公示」「令和5年地価公示」「令和4年地価公示」 - 国土交通省 国土数値情報「地価公示」(L01-22〜L01-26)— 全地点の再集計は土地ペディアによる - 図表の生成スクリプト: scripts/gen-chart-price-band.mjs(当リポジトリ)
※本記事の地価データは各年1月1日時点の地価公示に基づき、国土数値情報の全地点データから土地ペディアが独自に集計したものです。用途区分020(林地)は集計から除外しています。変動率は各地点の単純平均で、国土交通省の公表値とは集計方法が異なる場合があります。